資産倍増プロジェクト専用ファンド第2弾の1本として2011年11月に設定された、野村アセットマネジメントの「野村グローバル・ロング・ショート」。先進主要国の株価指数先物や債券先物、為替予約の取引を組み合わせることで、相場環境に関わらず長期にわたって安定的に収益を獲得していこうというファンドだ。
このファンドの2016年1~11月末までの11カ月間の運用状況と、ファンドの仕組み、活用方法などについて、井上裕士・野村アセットマネジメント金融法人営業部シニア・マネージャーに話を聞いた。
■2016年1~11月末までのパフォーマンスは+0.2%とほぼ横ばい
まずは、直近11カ月間の野村グローバル・ロング・ショートの運用状況を振り返ってもらった。
「基準価額ベースでは、11カ月間のパフォーマンスは+0.2%とほぼ横ばいでした。また、前後半に分けた場合は、1~6月末までの前半が-0.2%、7~11月末が+0.4%と若干後半のほうがよくなりました。ロング・ショートという手法にとっては厳しい一年でした」(井上シニア・マネージャー、以下カギカッコ同)

このファンドは、株式、債券、通貨の3つの資産クラスでポジションを構築しているが、資産クラスごとに見た場合は、「前後半を通して通貨は好調でしたが、前半は株式がマイナスになり、後半は債券が足を引っ張る結果となりました」。
ただ、11カ月の間には大きく上昇を取れた局面もあるという。たとえば、前半の6カ月間では、原油安などによって世界的な株安となった年初から1月の中旬にかけて基準価額が大きく上昇した。
「日経平均が約2週間で10%以上も下落する中、このファンドは200円も上昇しました。しかし、その後原油価格が反発して、中国懸念もやや後退し、マーケットが急激に反転する局面では上昇を追いきれませんでした。結局は、上がって下がるという『行って来い』の状況になりました」
また、6月下旬のブレグジット(英国のEU離脱問題)の際にも、一時的に大きな上昇を取れたという。通貨で、もともとポンドを売り建てていたところに、ブレグジットによってポンド安が起きたことがプラスに働いた。「ブレグジットのマーケットに対する影響は1週間ほどで収束したため、プラスには効いたものの、それほど大きな利益は得られませんでした」。
●ファンドの基準価額と純資産額の推移
後半の5カ月では、債券のマイナスが響いた。具体的には、米国債を買い建てて、ユーロ圏のドイツ債や英国債、また豪州債を強めに売り建てていたというが、「この期間に米国債が大きく売られたため、損失が出てしまいました」。
「年初から買われていた米国債も、利上げ観測によって金利がフラットから上昇する方向に向かってしまったため、思ったように価格が上がらず、支えにはなりませんでした。ただ、英国債やドイツ債については、さすがに買われ過ぎたということで8月以降は価格が下がっていて、プラスに寄与しつつあります」
11カ月間を一言でまとめると、「リスクオンとリスクオフが毎月のようにバタバタと入れ替わる印象が強かった」という井上シニア・マネージャー。「定量モデルによる戦略がうまくはまったときもある一方で、ファンドのポジション調整が後手に回ったところも、若干あったと感じています」。
2016年11月30日時点の基準価額は1万866円(分配金控除後)。設定来のパフォーマンスは+9.2%で、ベンチマークである日本円1カ月LIBORの+0.4%を8.8ポイント上回った。分配金は年1回の決算ごとに10円(1万口あたり、課税前)が支払われており、累計では50円となっている。