■つみたてNISAだけでなく、資産全体でバランスを取ることが重要
つみたてNISAのことを考えていると、どうしても「つみたてNISAで何を買うか、いくら積み立てるか」というところばかりに意識がいきがちです。しかし、本当に大切なのは、ご自身の資産全体でアセットアロケーションを考えることです。
たとえば、下の図のように、課税口座、iDeCoを含む確定拠出年金、つみたてNISA口座(または既存NISA口座)とお金の置き場所を3つに分けて、どんな資産に投資していけばいいか考えてみましょう。下の図の例は、資産が1000万円ある場合なので、投資初心者の人が見るとちょっと高額と思うかもしれませんが、どの口座で何に投資していくかという基本的な考え方は、資産が多額でも少額でも変わりません。
●資産全体で何に投資するのかを考える(例)
先ほど、「つみたてNISAでバランス型投信を選ぶ必要はない」とお話しましたが、バランス型を選びたいと考えるのは、リスクを抑えたいというのが理由だと思います。しかし、一般論としてリスクは商品選択よりも、投資金額で調整したほうがよいと言えます。
つまり、つみたてNISAで毎月2万円バランス型に投資するよりは、つみたてNISAでは株式のインデックス型を1万円、課税口座で個人向け国債に1万円といった振り分け方をすることでリスクを抑えればよいのです。さらに、このように金額で調整したほうが、つみたてNISAの節税効果を十分に生かせて、かつ手数料(信託報酬)も少なくて済みます。
また、資産全体で国内外に分散すればいいので、つみたてNISAでわざわざ複数の投信に投資する必要はないでしょう。すでに述べたとおり、課税所得のある人は、まずiDeCoを優先したほうがいいというのもあります。たとえば、iDeCoで外国株式(先進国)のインデックス型投信を買っているなら、つみたてNISAではTOPIX連動のインデックス型投信を選んで、「国際分散投資」を実現するといった方法を取ることをおすすめします。
■「使用目的」は考えずに、淡々と積み立てていくのがポイント
つみたてNISAは、いつでも自由に払い出しが可能です。ただ、一度始めたらあまり短絡的に積み立てをやめたり、ちょっとお金が足りないからといった今日明日のことで引き出してしまったりというのはおすすめできません。
始めるときにきちんと考えて、積み立て続けられる商品を選び、途中でやめなくてもいい金額を設定して、あとはそれを淡々と続けていって欲しいと思います。積み立て投資を続けていくことで資産が積み上がっていくことは、ご自身の安心につながるからです。
つみたてNISAは、20年間という長期の投資になるので、「老後資金」と考える人も多いかもしれません。実際、金融庁が作ったつみたてNISAのパンフレットには、老後資金や教育資金、マイホーム資金が用途のイメージとして挙げられています。確かに、資産運用では、「○○のための資金」というゴールベースの考え方をすることが少なくありません。
しかし、目的を決めてつみたてNISAをやる必要はありません。とにかく、きちんとお金を積み上げていくことができれば、あとは必要なときに何に使うか、適宜考えていけばいいのです。
繰り返しになりますが、つみたてNISAは、将来に向けて資産形成をしていこうという人を応援するための制度です。少額でもいいのでまずは始めてみること、そして続けていくことが何より大切だと思います。
岩城 みずほ (いわき みずほ)
ファイナンシャルプランナー CFP®認定者 オフィスべネフィット代表
「金融商品を販売することによるコミッションを得ず、お客様の利益を最大限に、中立的な立場でコンサルティングを実施中。慶応義塾大学卒。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年間活動後、セミナー会社、生命保険会社を経てFPとして独立。個人相談、講演、執筆を行っている。
東洋経済オンライン『今からでも必ず解決できる!おカネと人生の相談室』連載中、毎日新聞経済プレミア「保険選びの相談室」連載中、All About他。貯めると増やすの車座の会「C(貯蓄)リーグ」、「サムライズ勉強会」主宰。著書『人生にお金はいくら必要か』(東洋経済新報社)、『そこ、ハッキリ答えてください!「お金」の考え方このままでいいのか心配です。』(日本経済新聞出版社)他。
(取材・文/肥後紀子、撮影/柴田潔)