2023年5月、古代ギリシャコインがアンティークコイン史上最高価格の約8億3,500万円で落札されました。
古代ギリシャコインに8億円以上もの価格が付いたことにより、いかにアンティークコインが歴史的・資産的に注目されているかがよくわかります。
今回は、史上最高価格で落札されたコインについて、ニュースの概要をご紹介するとともに、どのようなコインなのか、なぜそこまでの高額になったのか、を解説します。
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スイスで古代ギリシャのコインが史上最高価格で落札
2023年5月、スイスにて開催されたオークションにて、古代ギリシャのコインがアンティークコイン史上過去最高価格で落札されました。
その価格は、539万スイスフラン。
落札当時のレートに換算すると、日本円でおよそ8億3,500万円となります。
出品前の予想落札価格は125万スイスフランであり、予想の4倍以上の価格で落札されたことになります。
スイスで開催されたオークションは、古代コインのオークションをメインに開催する企業、「Numismatica Ars Classica」によるもの。
「Numismatica Ars Classica」はスイスのチューリッヒを拠点とし、1989年よりオークションを開催しています。
現在は春と秋の年に2回、定期的にスイスの高級ホテルにてオークションを主催しており、チューリッヒの他に、ロンドン、ミラノ、シカゴにも支社をかまえる国際的な企業です。
今回のオークションの共同ディレクター、Arturo Russo氏は、予想落札価格の4倍以上の価格で該当コインが落札されたことに非常に満足しているとコメントしました。
また、今回のように高額で落札された背景には、アンティークコインへの世間的な注目度があがっていること、コイン市場やアンティークコイン投資が活性化してきていることが理由であるという見解を示しました。
史上最高価格約8億3,500万円で落札されたコインはどのようなコイン?
539万スイスフラン、落札時のレートに換算するとおよそ8億3,500万円で落札された古代ギリシャコイン。
史上最高価格で落札されたコインは、一体どのようなコインなのでしょうか。
コインの時代背景
落札されたコインは、紀元前380年から304年の間に古代ギリシャの都市、パンティカパイオンにて鋳造されたものです。
パンティカパイオンは、現在のギリシャのクリミア半島に位置する都市で、紀元前5世紀から4世紀の間、ボスポロス王国の首都として栄えていました。
およそ2400年前のコインかつ、古代ギリシャ時代の国家であるボスポロス王国のコインということで歴史的にも非常に価値のあるコインと言えるでしょう。
コインのデザイン
コインの表面にはサテュロスの頭部、裏面には槍をくわえたグリフォンが刻印されています。
サテュロスは、ギリシャ神話に登場する半人半獣の精霊で、「自然の豊穣の化身、欲情の塊」と表現されることもあります。
ボスポロス王国のコインに刻印されている理由として、ボスポロスの初代国王がこの精霊サテュロスと同名のサテュロス1世であったことが考えられます。
裏面のグリフォンは、鷲もしくは鷹の上半身とライオンの下半身を持った空想上の伝説の生物です。
古代ギリシャ語で曲がったクチバシを意味する「グリュプス」という言葉がグリフォンの語源と言われています。
グリフォンに関してはさまざまな逸話がありますが、黄金を守る存在とされていたことから、金貨に刻印されていることが考えられます。
コインの状態
非常に大きな金の地金に高浮彫で刻印されており、刻印の位置も中央に配置されています。
古代ギリシャコインの中でも非常に状態の良いコインです。
該当コインが史上最高価格になった理由
史上最高価格で落札された古代ギリシャコインは、非常に歴史的価値があり、状態の良いコインであることがわかりました。
しかし、ここまでの高額になった理由はそれだけではありません。
このコインが3億円を超える落札価格になった理由について2点、ご紹介します。
デザインの珍しさ
まずは、この古代ギリシャコインのデザインの珍しさが高額の理由のひとつと言えます。
コインの表面に刻印されているサテュロスの頭部は、4分の3ほど左側を向いています。
通常、古代ギリシャコインに刻印されたサテュロス像などの肖像は、完全に真横を向いていることがほとんど。
このように、真横ではなくやや左を向いている肖像は非常に珍しいと言えるでしょう。
これは、現在のイタリアに位置するシラクサの、非常に著名な彫刻師であったキモンによる、絶妙に4分の3横を向いたアレトゥーサの肖像がきっかけに流行したと考えられます。
そのアレトゥーサの肖像が登場して以降、イタリアの都市で発行された金貨には同様の4分の3横を向いた肖像が複数見られます。
しかし、古代ギリシャのコインとしては、この向きの肖像は非常に珍しいものです。
そのため、非常に人気で高額になりがちの古代ギリシャコインの中でもこのコインが最高額で落札されたことが考えられます。
コインそのものが持つ歴史
古代コインの価値は、実際に貨幣として使われた背景だけでなく、その後どういった経緯をたどって出品されたのか、が影響する場合も大いにあります。
このコインは長年ロシアのエルミタージュ美術館に収蔵されたのちに、ソ連政府によって売却されたコインです。
ソ連政府が工業化のための資金調達に売却したエルミタージュ美術館の収蔵品のひとつであり、「スターリンが売却したコイン」としての価値も付与されているでしょう。
また、その後、Charles Gillet氏のコレクションのひとつになったことも重要です。
Charles Gillet氏は素晴らしい古代ギリシャコインの数々をコレクションしていた人物。
彼のコレクションの一部であったことも、価値の付与に一躍買っています。
さまざまな要因が重なり史上最高落札価格に
今回は、2023年5月に史上最高価格の539万スイスフランで落札された古代ギリシャコインについて解説しました。
古代ギリシャコインとして歴史的価値があり、2400年前のコインとしては非常に良い状態で残っていた当コイン。
それだけでなく、古代ギリシャコインには珍しく4分の3横を向いた肖像が刻印されていること、コインがたどった経緯にも非常に価値があることから、この価格となったことが考えられます。
また、古代コインの世間的関心が高まっていることも、理由のひとつと言えるでしょう。
このように、この古代ギリシャコインが日本円で8億3,500万円もの価格で落札されたのにはさまざまな理由があります。
アンティークコインの価値は、さまざまな要因によって決まるのです。