【第2回】投資信託って、どんなふうに作られているの?

【今回の解答者】SBI証券 執行役員 投信・債券部長 橋本隆吾さん

毎月のように、新しい投資信託が発売されています。2018年は、1年間で407本の株式投資信託が新規設定されました。しかし、どのように投資信託が作られているのかを、個人投資家が知る機会はなかなかありません。そこで今回は、投信運用会社勤務の経験もあるSBI証券の橋本隆吾さんに、「投資信託ができるまで」の一連の流れや、同じ指数に連動する投信がいくつも作られる理由、最近の新規設定本数の変化などについて教えてもらいました。

■Q1:新しい投資信託は、誰がどのように作っていますか?
■A1:運用会社のファンドマネージャーや商品開発部門が中心になって作っています

投資信託は、証券会社や銀行などの販売会社を通じて販売されています。

この投資信託を作ったり、運用したりしているのが運用会社です。

新しい投資信託を作る際の一連の流れは、次のとおりです。

          ●公募投資信託が新規設定されるまで
「どんな投資信託を作るのか」という運用アイデアや商品コンセプトを検討するところからスタートします。基本的には、運用会社のファンドマネージャーや商品開発部門の担当者が、マーケットや投資時流、投資家の動向などを考慮し、投資対象や投資テーマ、運用手法などを考えます。

直接お客様との接点がある販売会社とのディスカッションにより、商品が生まれる場合もあります。「個人投資家には、今このようなニーズがある」、「こんな商品を求めている」というような販売サイドの声から商品アイデアを具体化し、実際にファンドが設定されることもあります。

SBI証券 執行役員 投信・債券部長 橋本隆吾さん

アイデアやテーマ自体は良くても、実際にきちんと運用ができなければ商品として成り立ちません。商品の具体的な仕様を決定するまでには、投資対象となる市場や投資銘柄などについて緻密に調査・分析をしたり、実際の運用に近い形でモデルポートフォリオを組んで運用実績のシミュレーションを行い、投資家の皆さまに提供にするにふさわしい運用ができるかどうか検証を行います。特にこれまでにない運用手法やテーマへの投資の場合にはより詳細な検証が必要となります。

こうした検証を踏まえ、販売手数料や信託報酬をはじめとして運用管理費用、信託財産留保額など、お客さまからいただくファンドに係る費用の検討も行います。

商品の概要が確定したら、次は販売に向けた準備が始まります。金融商品取引法に基づく有価証券届出書の準備や目論見書の作成などです。こうした一連の手続きを経て、ファンドの募集を開始することができ、募集資金でファンドが設定されます。そしていよいよ、実際の運用が開始されるのです。

■Q2:1本の投資信託ができるまでには、どのくらいの時間が必要ですか?
■A2:2カ月~1年以上まで、商品によってかなり違いがあります

商品によってファンド設定までの準備期間は大きく異なります。例えば日経平均株価への連動を目指すようなインデックスファンドの場合、インデックスファンドを既に設定・運用している運用会社であれば、最短2ヶ月程度で設定することも可能です。インデックス型でも、指数自体が新しい場合には、実際に商品として設定が可能か等の検討が必要なため、時間を要します。

アクティブファンドの場合は、一般的にインデックスファンドより時間がかかる傾向があります。例えばテーマ型ファンドの場合、そのテーマが本当に有効なのか、具体的にどのような銘柄をどういったプロセスで選定するのか、といった調査・検討が必要となるからです。

■Q3:テーマ型投信は、設定している間に「旬」が過ぎてしまうのではないかと心配なのですが…
■A3:しっかりしたテーマであれば、そんなに急に「旬」は過ぎないはずです

長期的に成長が見込まれる「テーマ」が、多く選定されています。まず、前提である「テーマ」の考え方ですが、テーマ型投信の「テーマ」とは、例えば「米国の大統領がトランプ氏になったからインフラ投資関連の投信をつくろう」といった近視眼的な考え方ではありません。

本来のテーマとは、かつての「IT」や「インターネット」、また最近であれば「AI」や「ロボティクス」、「自動運転」、「5G」など、世の中を変えるようなインパクトがあり、世界の経済成長に貢献するものではないでしょうか。さらに、投資信託という観点では、そのテーマによって収益が大幅に上がる、あるいは長期・継続的に成長していく企業があるかどうか、という点が重要です。

「IT」の場合、いったんはITバブルがはじけて大きく下落しましたが、その後再び回復し、さらに上昇したファンドもありました。先ほど挙げた「自動運転」や「5G」なども、これから世の中を変えていくテーマであり、決して短期的なものではないと考えられます。このように世の中の変化や経済成長を踏まえて選定されたテーマであれば、ファンドの新規設定をしている間にピークを過ぎてしまうということはないのではないかと思います。

■Q4:1つの運用会社で同じような投資信託が作られる理由は?
■A4:コストや販売先によって商品を分けるケースがあります

コストや販売経路によって商品を分けるケースがあります。1つの運用会社で、同じ指数に連動する投資信託を複数設定しているケースは少なくありません。同じような投資信託なのに、何が違うのかわからない、と困惑される方もいらっしゃるかと思います。これは多くの場合、営業上の理由からと考えられます。例えば、同じ仕組みの商品であっても、販売経路が対面か、ネットチャネルかによってコストが異なるファンドを設定することがあります。対面で商品説明を行う販売会社と、お客さまがご自身でファンドを購入されるネットの販売会社とでは、販売に係るコストや維持費が異なることから、ネットの販売会社向けにコストを抑えた商品設計が検討されるケースもあります。

■Q5:新しい投資信託はどんどん増えていますか?
■A5:直近では、新規設定の数は少しずつ減っています

個人投資家が買える日本の公募投信は約6,000本存在します。償還される投資信託がある一方で、新たに設定されるものもあります。年ごとに新規設定される本数にバラつきはありますが、最近の状況を見ると、2013年の891本をピークに、減少傾向にあることがわかります。

          ●投資信託の新設ファンド本数の推移

出典:一般社団法人投資信託協会 「契約型公募投資信託の新設ファンドの本数」より構成

2018年は「つみたてNISA(積立専用の少額投資非課税制度)」がスタートし、「つみたてNISA」専用の商品が複数設定されたにも関わらず、407本と過去10年間で最も少ない結果となりました。

理由の一つとして考えられるのが、多くの金融機関が「顧客本位の業務運営に関する原則」を採択したことによるものと思われます。かつて、対面の金融機関などでは、顧客に1年ほど投資信託を保有させて多少利益が出たところで、販売手数料を得るために別の新しい投資信託に乗り換えさせる「回転売買」と呼ばれるやり方がよく見られました。この販売方法が見直され、良質なファンドや低コストのファンドを長期保有する等本来あるべき方向に変わってきたことによるものです。新しい投資信託への乗換えを提案するのでなく、リターンの良い商品をリセールする、またはラップ口座での運用を行う、という販売スタイルに販売会社のシフトが起きていて、それが投資信託の新規設定本数の変化にもつながっていると考えられます。

また、【A4】で、1つの運用会社で同じような投資信託を複数設定するケースがあるというお話をしましたが、これも今が過渡期であり、今後は徐々に少なくなってくるのではないかと考えます。運用管理費用の違いであれば、費用が低いものに収れんされていくのが自然ですし、同じような商品をいくつも管理していくのは、コスト面でも効率的ではないためです。

【まとめ】

個人投資家の方は、「投資信託がどのように作られているか」よりも、「自分に合った投資信託はどうやって探せばいいのか」、「良い投資信託を見分けるには何を見るべきか」という点に関心が高く、重要視されているかと思います。もちろん、それらも重要なことですが、今回ご説明させていただいた投資信託の製造工程も頭の片隅に置いていただき、知っていただくことで、これまでより少しでも「投資信託」が身近なものになれば幸いです。

(取材・構成 肥後紀子)