投資信託の税金を正しく理解して、上手に節税しよう!【投資信託の確定申告について】

【今回の解答者】日本中央会計事務所 代表取締役 青木寿幸さん(公認会計士・税理士)

今年も確定申告のシーズンになりました。投資信託を取引している人の中には、確定申告をすることで税金を減らせる人が少なくありません。特に今年は、投信の分配金(や株式の配当)の税金に関する「裏ワザ」が明文化され、2017年に利益が出ている人でも節税できる可能性があるそうです! 気になる投資信託の税金&確定申告について、金融商品の税金にも詳しい公認会計士・税理士の青木寿幸さんに教えてもらいました。

公認会計士・税理士 青木寿幸さん

 今年も確定申告のシーズンになりました。投資信託を取引している人の中には、確定申告をすることで税金を減らせる人が少なくありません。特に今年は、投信の分配金(株式の配当も同じ)の税金に関する「裏ワザ」が明文化され、2017年に利益が出ている人でも節税できる可能性があるそうです! 気になる投資信託の税金&確定申告について、金融商品の税金にも詳しい公認会計士・税理士の青木寿幸さんに教えてもらいました。

■Q1:そもそも投資信託の税率ってどうなっているの?
■A1:株式投資信託なら、売却益も分配金も税率は20%です

 一口に「投資信託」と言っても、株式投資信託(いわゆる投資信託のこと)、MRFやMMFなどの公社債投資信託、ETF(上場投資信託)、Jリート(不動産投資信託)とさまざまな種類がありますが、いずれも税率は20%(別途、復興特別所得税がかかり、合計では20.315%)です。ちなみに、以前は公社債投資信託の売却益は非課税でしたが、2016年(平成28年)からは譲渡所得に分類されています。

 ここからは、主に株式投資信託について話していきますが、課税方法は「売却益」と「分配金」では異なります。売却益の場合は、他の所得とは切り離して税額を計算する「申告分離課税」となっています。一方、分配金は、利益が出たときに天引きで税金が徴収される「源泉分離課税」が採用されています。

 「申告分離課税」の対象となる所得については、原則として確定申告が必要です。ただし、証券会社で「特定口座(源泉徴収あり)」を選択している人は、証券会社が代わりに納税してくれるので自分で確定申告をする必要はありません。

 なお、分配金には、運用の収益などから得られた「普通分配金」と元本を取り崩している「元本払戻金(特別分配金)」の2種類がありますが、課税されるのは利益にあたる「普通分配金」だけです。

●株式投資信託の税金

■Q2:投資信託の取引で、確定申告が必要なのはどんな人?
■A2:特定口座(源泉なし)と一般口座で、利益が出ている人は必須です

 次に、2017年に投資信託の取引をした人のうち、確定申告が必須という人について説明しましょう。

 投信の売却で儲けが出た人は、原則として確定申告が必要になります。ただし、Q1で説明したとおり、「特定口座」で「源泉徴収あり」を選択している人は、申告の義務はありません。また、「NISA(少額投資非課税制度)」口座を利用している場合も、確定申告は不要です。なぜなら、NISAの場合はそもそも「非課税口座」なのでどんなに利益が出ても課税されないためです。

 「特定口座(源泉徴収あり)」とNISA口座以外、つまり「特定口座(源泉徴収なし)」と「一般口座」を利用している人は、確定申告をして自分で税金を納めることになります。ただ、会社員であれば、「特定口座(源泉徴収なし)」や「一般口座」でも、1ヶ所からの給与があり、株や投資信託の譲渡所得などの合計が20万円以下の場合に限って、確定申告は不要です。

●確定申告が必要な人と不要な人 

  ここまで読んで、「自分は特定口座(源泉徴収あり)だから」、あるいは、「会社員で譲渡所得の合計が20万円以下だから」、確定申告は関係ないと思った人もいるかもしれません。しかし、必須ではなくても申告をすることで、節税ができるケースもあります。Q3とQ4では、「(必須ではないけれど)確定申告をしたほうがいい場合」を紹介しましょう。

■Q3:損が出ている場合でも、確定申告をしたほうがいい?
■A3:申告すれば、損益通算や損失の繰り越しが可能になります

 投信や株の取引で損を出した場合は、確定申告によって節税することが可能です。その理由は、「損益通算」と「損失の繰り越し」ができるからです。

①損益通算

 まずは、「損益通算」から説明しましょう。損益通算とは、複数の金融商品の利益と損失を相殺することです。

 たとえば、複数の口座を持っていて、ある口座では株で30万円儲けが出たけれど、別の口座では投資信託で10万円の損をしたという場合。何もしなければ、株の儲けに約6万円の税金がかかりますが、もし損益通算をすれば、トータルの儲けは「30万円-10万円」で20万円になるため、税金は約4万円で済むことになります。具体的な数字を見れば、当てはまる人は必ず損益通算をしたほうがいいということがわかるのではないでしょうか。

投資信託の儲け・損失と損益通算ができる金融商品は以下のとおりです。

●投資信託と損益通算が可能な金融商品

 

 

 このうち、MRFやMMFなどの公社債投資信託や国債や地方債、外国債券などの特定公社債、外貨建てMMFについては、2016年から投資信託と損益通算ができるようになりました。そのため、まだご存じない方もいるかもしれませんね。一方、外貨預金やFX、日経225先物など、この表にはない商品は投資信託とは損益通算ができません。

②損失の繰り越し

 「損失の繰り越し」とは、損益通算をしてもまだ損失が残っている場合、その損失を申告することで翌年以降3年間にわたって繰り越せるという制度のことです。繰り越している期間中に利益が出れば、繰り越した損失と利益を相殺することが可能です。また、損失の繰り越しは、1つの口座(特定口座でも一般口座でも)しか持っていない場合も利用することができます。

  具体的な数字で見てみましょう。たとえば、2017年(平成29年)に50万円の損失が出て、損失の繰り越しの手続きをした場合。翌2018年に10万円の利益が出ても、繰り越した50万円の損失と損益通算して税金を減らすことができます。また2019年には前年の損失40万円が繰り越されるため、40万円の利益までは相殺が可能です。

 注意したいのは、損失の繰り越しをする場合は、毎年継続して申告を行ない、必ず繰り越しの手続きをしなくてはいけないということです。たとえば上の例で言うと、「21019年は投信や株の売買をしなかったから」と2019年の確定申告を怠ってしまうと、本来、損失繰り越しの最終年であるはずの2020年に、繰り越した損失が消滅してしまいます。

 また、損益通算、損失の繰り越しともに、3月15日の確定申告の期限を過ぎていても申告することが可能です。ただし、医療費控除や住宅ローン控除などで一度申告をしてしまうと、2度と申告ができません。会社員の場合、住宅ローン控除については、初回以外は年末調整で済みますが、節税に関心が高い人ほど医療費控除で確定申告をするケースが多いと思います。医療費控除や今回からスタートするセルフメディケーション税制で確定申告しようと考えた際には、併せて損益通算や損失の繰り越しがないかどうかもよく確認してください。

セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)…国が認めた医薬品を年間1万2000円を超えて購入した場合、1万2000円超の部分(上限8万8000円)について所得控除が認められる。医療費控除との併用は不可。

■Q4:今回から明文化された「分配金」の税金に関する裏ワザとは?
■A4:所得税は総合課税、住民税は源泉分離課税を選ぶと、お得になる可能性大!

 投資信託の普通分配金や株の配当金は源泉分離課税のため、通常は、その都度、源泉徴収で所得税15%と住民税5%(+復興特別所得税)が天引きされています。しかし、総合課税を選び「配当控除」を使って確定申告すれば、税金を減らせる可能性があります。

 「配当控除」とは、株の配当や投信の分配金について総合課税を選んで確定申告をした場合に、所得税や住民税から一定額が控除される制度のことです。なお、配当控除は日本株の配当や株式投資信託、ETFの分配金で使えますが、外国株の配当とJリートの分配金には配当控除は使えません。

 ただ、総合課税を選んで配当控除を使うと、所得税は得になっても、住民税はかえって高くなるという難点がありました。たとえば、投信をメインに取引していて課税所得が330万円という場合で試算すると、総合課税では所得税率は5%(源泉徴収なら15%)になりますが、住民税は8.6%(源泉徴収なら5%)と源泉徴収時より高くなります。「裏ワザ」として所得税と住民税の課税方式を変える、という方法はありましたが、一般的な方法とは言えませんでした。

 しかし、今回から「所得税」と「住民税」で別々の課税方式を選べることを総務省が明文化。所得税は配当控除が使える総合課税を選び、住民税では総合課税より税率の低い源泉分離課税を選ぶことで、分配金や配当に関わる税金を最大限減らせるようになったのです。

 気になる具体的な手順をお話ししましょう。まず、配当・分配金については「総合課税」を選んで確定申告を行ないます。次に、市役所など居住地域の自治体で住民税の申告書類をもらい、必要事項を記入して提出すれば完了です。

 気を付けたいのは、住民税の申告書類を提出する時期です。住民税の納税通知書が送られてくる6月初旬より前に提出しないと、受け付けてもらえません。忘れないように、確定申告で税務署に出かけた際に、ついでに市役所まで足を延ばすなどして早めに申告したほうが安心です。

 なお、この方法で税金がお得になる所得の目安は、株と投信で異なります。試算すると、株の配当金がメインなら所得金額900万円以下(独身の給与所得者なら年収1200万円程度。扶養家族がいればもっと高額になる)、投信の分配金がメインの場合は695万円以下(年収換算で900万円程度)となっています。

 自治体に書類をもらいに行くなど少々手間はかかりますが、毎月分配型投資信託など分配金の多い投資信託を保有している人や、配当に注目した株式投資を行なっている人などは、検討して損はないと言えるでしょう。

【まとめ】

投資信託を取引していて、納め過ぎた税金を少しでも取り戻せる可能性がある人は、今年は確定申告を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、複数の証券会社で特定口座を開設している場合、申告する口座は選ぶことができます。損益通算や損失の繰り越し、配当控除の利用で明らかに得になる口座以外は、申告をせずに特定口座の源泉徴収で完結することをおすすめします(損益通算をするときも口座を選んで申告が可能です)。なぜなら、関係のない特定口座まで申告すると所得が増えてしまい、金額によっては国民健康保険料が上がることもあり得るからです。

(取材・文/肥後紀子、撮影/柴田潔)