「資産運用」は非常に手がかかるので、プロに任せるという方法もあり。ご自身でやるなら、まずは投信積立がおすすめです

ファイナンシャルスタンダード 福田猛さん、鈴木頼長さんに聞く

投資信託への投資によって、老後資金やさまざまなライフイベントの資金を作っていこうと考えている人は多いでしょう。その際に悩むのが、何に着目してどんなタイプの商品を選べばよいのか、またどんな方法を取るのが有効かということではないでしょうか。今回は、金融機関から独立した立場で資産運用のアドバイスを行なうIFA法人・ファイナンシャルスタンダードの代表取締役・福田猛さんと、同社のポートフォリオマネージャー・鈴木頼長さんのお話から、そのヒントを見つけましょう。

■「IFA」とは金融機関から独立した資産運用のアドバイザーです

まずは、IFA(独立系金融アドバイザー)について簡単にご説明します。IFAとは、金融機関から独立した立場でお客様一人ひとりに合ったポートフォリオの提案など、資産運用のアドバイスを行なうコンサルタントのことです。金融商品仲介業者として内閣総理大臣から正式に登録を受けています。当社の場合は、楽天証券と業務委託契約をしています。

具体的には、お客様のお話を伺って長期的なプランに基づいて、お客様一人ひとりに合った提案を行ない、その後のフォローまでを一貫してお手伝いしていきます。楽天証券と業務委託契約はしていますが、あくまで独立した立場でお客様に提案を行います。

ファイナンシャルスタンダード 代表取締役 福田猛さん

FP(ファイナンシャルプランナー)との違いは、相談料を一切いただかないことです。当社では、お客様が証券会社に支払う取引手数料の一部を費用としていただくことになっています。また、FPは金融商品仲介業や投資助言代理業ではないため、具体的な商品名を挙げて勧めることはできません。この点も、IFAとの大きな違いと言えるでしょう。

IFAは、米国や英国などではすでにポピュラーな存在です。日本ではまだあまり馴染みがありませんが、少しずつ認知度は向上していると実感しています。2018年6月末現在、金融商品仲介業者に登録している法人数は584社、法人の登録外務員数は3244人となっています(「日本証券業協会」のデータによる)。

ところで、IFAの存在意義はどこにあるでしょうか。「資産運用はやりたいけれど、自分ではよくわからない」というのもあると思いますが、資産運用は完璧にやろうとすると非常に手間がかかって、しかも面白くないものです。まず、資産運用のゴールを設定して、それに見合った商品を選び、適切なポートフォリオを組んで、その後のメンテナンスも欠かせません。リバランスをしたり、ときにはアロケーションを見直したり、商品を変えたり、これを長期的に続けていく必要があります。

たとえば、マツタケが取れる山を持っていても、手を入れ続けなければマツタケは生えて来なくなります。木が茂り過ぎたら伐採したり、雑草や落ち葉を片付けたり……定期的なメンテナンスが重要です。しかし、マツタケは欲しいけれど山の手入れは大変で面白くないのでやりたくないと考える人がほとんどでしょう。だったらどうするか。プロに任せるという選択肢があるのではないでしょうか。「完璧な資産運用」も同じです。長期的に続けるのは、面倒で面白くないので、IFAを活用するという選択肢があると私は考えます。

■「低コストのインデックス型がいい」に、欠けている視点とは?

さて、ここからは投資信託を選ぶ際に、個人投資家がなかなか気づきにくいポイントについてお話ししたいと思います。「投資信託はインデックス型(だけ)がいい」「アクティブはコストが高く、リターンではインデックス型に負ける」といった話を見聞きされたことがある人は多いのではないでしょうか。

インデックスファンドのメリットとしてよく挙げられるのが、「コストの低さ」です。インデックスファンドは、アクティブファンドに比べると相対的にコストが低いものが多くなっています。たとえば、信託報酬が年間1%低ければ、10年で10%、30年なら30%低くなるわけで、仮に運用自体が同じパフォーマンスであれば、コストの低い投資信託のほうが長期的にリターンは高くなります。

また、わざわざ高い手数料を払っても、アクティブファンドが必ずインデックス型以上のリターンを獲得できるのかという問題もあります。前述の「アクティブファンドはインデックスファンドに勝てない」というのはよく聞く話で、実際、アクティブ型がインデックス型にパフォーマンスで負けている例はいくらでもあります。

これらのことから、「インデックス型がいい」とおっしゃる個人投資家が多いのはよくわかります。ただし、これはあくまで「リターン」に着目した話です。資産運用では、「リターン」だけではなく「リスク」にも目を配る必要がありますが、その部分が抜け落ちた考え方だと言えます。例えば、株式に投資するインデックスファンドは、コストは低いもののリスクは高いままであるということです。

つまり、株式へ投資するインデックスファンドは基準価額の振れ幅は大きいということです。そこをきちんと理解できていないと、「いい商品だと聞いてインデックスファンドを買ったのに、大きく下がってしまった。どうしよう」となってしまいます。実際、私たちの会社には、そういった悩みをお持ちのお客様がよく相談にいらっしゃいます。もちろん、「だからインデックスファンドはダメ」ということではまったくありません。ただ、「インデックスファンドはリスクを低減する商品ではない」ということは正しく知っておく必要があります。

■「コストを払ってでもリスクを低減する」という考え方もある

では、リスクを低減できる投資信託はあるでしょうか。実は、アクティブファンドの中には、「リスク(振れ幅)を抑える」ことを重視した商品もあります。

たとえば、投資対象が比較的似ていて、インデックス型が10%下がるときには5%で下げ止まるようなアクティブファンドがあれば、そこからの戻りが同じ、もしくはインデックス型のほうがややよくても、下落の幅が小さかった分、結果的にはアクティブ型のほうが高いリターンを得られます。そう考えると、コストの高い低いだけにこだわらず、逆にコストを払ってでもリスクを抑える投資信託を選ぶ余地も出てくるのではないでしょうか。

実際、米国などの投資信託の先進国では、「リスクを低減する投資信託」は少しずつですがシェアを伸ばしています。これについては、当社のポートフォリオマネージャーである鈴木から説明してもらいます。

ファイナンシャルスタンダード ポートフォリオマネージャー 鈴木頼長さん

≪鈴木≫ アクティブファンドの8割超は、株価指数などのベンチマークをどのくらい上回れるかを目標にしていますが、米国などにはそうではないタイプのアクティブファンドもあります。たとえば、目標は日本で言うTOPIXなどの「株価指数」と同じくらいのリターンを取ることで、ただし、それをできるだけ小さいリスクで実現するというようなファンドです。

どのような仕組みでそれを実現するのかというと、一例ですが、そうしたファンドでは、株価が高いときには株を買わずに現金比率を高くしておいて、安くなったときだけ株を買い入れます。そうすると、長い時間軸で見た場合には、株式市場全体より小さい振れ幅、つまりリスクが小さくなるというわけです。

こうした投資信託は、機関投資家や年金基金などの「プロ」向けの商品として、特にニーズが高くなっています。ただ、日本の個人投資家が「リスクに着目した投資信託」を活用するには、まだまだハードルが高い面もあります。

一つには、圧倒的に数が少ないことです。日本の投資信託(公募投信)は現在約6500本ほどありますが、相場環境にかかわらず利益の獲得を目指す「絶対収益型」も含めて、リスク低減に着目した商品はごくわずかです。また、アベノミクスのような大きく上昇する相場では、株式にフル投資するタイプの投資信託に比べてどうしてもリターンが抑えられてしまいます。もちろん、商品の仕組みと意義を理解できていれば問題はありませんが、現実には、銀行や証券の窓口でそこまでしっかり説明することは難しく、そのためこうした商品が積極的に活用される段階までまだ至っていないと言えるかもしれません。

●「絶対収益型」ファンドの例 「AR国内バリュー株式ファンド(サムライバリュー)」(アセットマネジメントOne)

有望な中小型バリュー株に投資すると同時に、TOPIX先物などを売建てることで、現物株式投資部分の値下がりリスクをヘッジ。相場環境にかかわらず、安定的なパフォーマンスの獲得を目指す仕組み。

 

■初心者が資産運用を始めるなら、まずは「投信積立」がおすすめ

投資信託を選ぶ際に「リスク」に着目するという視点があることは、ぜひ知っておいていただきたいと思います。しかし、ご自身で資産運用をする際には、「リスクを低減する投資信託」を1つだけ買っておけばいいというものではありません。

大切なのは、ご自身の資産状況やリスク許容度、運用の期間などを総合的に考慮した上で、最適なポートフォリオを組むことです。そして、その中に組み入れるファンドの一つとして、必要に応じてこうした投資信託を検討していただくことが重要です。

とは言え、個人の投資家それも初心者の方が、いきなり多くのことを踏まえながら総合的に考えてポートフォリオを組むというのは、現実的には簡単ではありません。すでにお話ししたように、完璧な資産運用は大変です。そこで、これから資産運用を始めたいという初心者の方には、投資信託の積立投資をおすすめします。

資産運用をする上でよく問題になるのが、「価格が下がると、怖くなって続けられなくなる」ことです。そのため、自身のリスク許容度を把握しておくことが重要になります。しかし、積立投資であれば、積立期間中に価格が下がっても気にする必要はありません。なぜなら、価格が下がったほうが同じ投資額でたくさんの口数を購入できるというメリットがあるからです。

●投信積立と口数の関係

投信積立は途中で価格が下がったほうがたくさんの口数を購入できる

もちろん、下がれば多少いやな気持になるかもしれませんが、「積立投資なら下がってもいい」ということだけ認識していれば、下がったときにも投資を続けられるのではないでしょうか。少なくとも、持っている資金を一括投資するよりは、値下がりに耐えられると思いますし、失敗する心配も非常に小さくなります。なお、投資信託の積立を行なう際には、「つみたてNISA(積立専用の少額投資非課税制度)」や「NISA(少額投資非課税制度)」の活用も検討するとよいでしょう。

■インデックスを1つ選ぶなら、「世界の株」に投資するものを

積立投資をする場合、初めての方なら「世界株のインデックスファンド」がわかりやすいと思います。たとえば、世界の20カ国以上の先進国の大型株&中型株の指数「MSCIワールドインデックス」への連動を目指す投資信託などがおすすめです。よく知っているから「日本」、新興国が伸びそうだから「インド」のように地域を限定せずに、幅広く世界に投資するものを選ぶことがポイントです。

≪鈴木≫ちなみに、新興国の成長を取っていくには新興国に投資しないといけないと思っている人が多いのですが、それは明らかな誤解です。一つ例を挙げると、トヨタ自動車はグローバルで1000万台以上売り上げていますが、新興国の分だけでその3分の1を占めています。つまり、先進国の株式に投資しても、間接的に新興国の成長を取っていることになるのです。

また、新興国は利益成長も大きいのですが、インフレ率も非常に高いので、その点には注意が必要です。高いインフレ率は中長期では通貨安を招くことが多いからです。そう考えると、あえて新興国のリスクを直接、取りに行く必要はありません。米国や欧州、日本など世界の幅広い国に投資していけばよいと考えます。

■バランス型ファンドやラップサービスも選択肢として有効

ポートフォリオを自分で完全に組むのは難しいけれど、「インデックスファンドの積立投資」よりもう一歩先に進んでみたいという方には、バランス型ファンドも選択肢の一つになり得るでしょう。インデックスファンドであっても、株式に投資するタイプであれば、リーマンショックのような暴落時には50%以上下げることもあります。株や債券など複数の資産に分散して投資するバランス型ファンドであれば、振れ幅を多少は抑える効果が期待できます。

もう一つは、ネット証券のラップサービスを利用する方法です。ラップサービスは投資一任契約に基づく投資サービスで、ロボアドバイザーなどを使って顧客のリスク許容度をあらかじめ確認した上で、ポートフォリオの提案から、ファンドの購入や管理、リバランスなどをすべて行ないます。ラップサービスであれば、有効フロンティア(※)に乗せる最適なポートフォリオを組んでくれるのではないでしょうか。利用にはコストが発生しますが、ネット証券のラップサービスなら年率1%前後などコストを抑えたものが多くなっています。

※有効フロンティア 現代ポートフォリオ理論の考え方の一つで、投資家が選択可能な組み合わせの中で、最もリスクが小さく最もリターンが大きい選択肢をつなぎ合わせた境界線のこと。

最後に、資産運用をするにあたっての心構えを少しお話しましょう。「桃栗三年柿八年、積立投資は丸十年」です。つまり、資産形成は長期で取り組むのが大原則ということです。簡単なようですが、続けるためには忍耐が必要です。先ほども説明したように、株式に投資する投資信託は振れ幅が大きいため途中で下がることがある一方で、個別株の短期売買のような切った張ったの「面白さ」はありません。

ただ、面白くはなくても、よほど理屈に合わないような商品を選ばない限り、10年間投信の積立を続ければ損をすることはほとんどないはずです。投資信託で長期積立投資をしていくことは、資産形成の「王道」です。これから始めたいという方は、まずは投信積立をスタートさせて、そこから今回お話した「リスク」に着目したアクティブファンドを学んだり、また機会があれば当社のようなIFAの活用もご検討いただければと思います。

(取材・文/肥後紀子、撮影/柴田潔)