テーマ型投信を『当てに行く』のは3つの理由から難しい。ではどうする? ~テーマ型投信の注意点と上手な付き合い方を考える~

ニッセイ基礎研究所 金融研究部 研究員 前山裕亮さんに聞く

今日は、いわゆる「テーマ型投信」との上手な付き合い方についてお話しようと思います。その前に、直近でどんな投資信託に人気が集まっていたのか、今年の1~4月の国内追加型投信の資金流入を見てみましょう。

■17年1~4月に売れていた投信の大半は、毎月分配型とテーマ型

 今日は、いわゆる「テーマ型投信」との上手な付き合い方についてお話しようと思います。その前に、直近でどんな投資信託に人気が集まっていたのか、今年の1~4月の国内追加型投信の資金流入を見てみましょう。

●2017年1~4月の国内追加型投信の流入ランキング

  4月までの集計ですが、表からは毎月分配型(青ベースの項目)とテーマ型(オレンジ、緑ベースの項目)という2つのトレンドが見て取れます。毎月分配型については、これまで同様に人気が高いと言えますが、一方で運用対象や手法は昨年までとは変わってきています。

ニッセイ基礎研究所 金融研究部 研究員 前山 裕亮氏

 具体的には、昨年までは米国リートに人気が一極集中していたのが、直近はオーストラリアの高配当株やリート系、米国のハイ・イールド債などに買いが分散しているようです。その理由としては、相次ぐ分配金の引き下げと、加えて米国の利上げの影響が考えられます。

 しかし、高い利回りだけを見て単純に米国からオーストラリアに乗り換えているのであれば問題です。なぜなら、米国とオーストラリアを比較すると、オーストラリアは資源国である分、先進国とは言え米国よりリスクは高いと言えるからです。

 振り返ると、05~06年頃は先進国の債券に投資するグローバルソブリンが人気を集めていましたが、当時は日本の10年物国債で1~2%、米国債なら4~5%と、先進国債券でもある程度の利回りは取れていました。でも、今同じような利回り、あるいはそれ以上の利回りを求めようとすると、どうしてもリスクの高いものに行くことになります。

 インカムゲインはうれしいものですし、毎月分配型も高利回りを狙うことも別に悪ではなく、投資家のニーズに合っていれば全然問題はないと私は考えます。ただ、昔と同様に多額の分配金を得ようとすると、以前に比べて取るべきリスクが高くなっているということは意識をする必要があるのではないでしょうか。

■「当たれば大きい」のが、テーマ型投信の最大の魅力ですが…

 さて、ここからは、今回の本題であるテーマ型投信の話をしていきましょう。先ほどの17年1~4月の資金流入ランキングの表を見ると、直近ではロボ並びにAI(人工知能)関連の投信が「産業物」の一大テーマとして非常に人気があることがわかります。また、地域を限定した「地域物」ではインドに投資する投信が1本入っています。

 ちなみに、2位と19位は厳密に言うとAI銘柄に投資するのではなく、AIを銘柄選別に使っている投信です。ただ、個人投資家から見るとAIテーマ物として取り扱われているのではないかという気もしていて、ここでは運用手法にAIを使ったこの2商品もカッコ書きした上でAI関連に入れています。

 テーマ型投信とは、「旬」のものに投資する投信という感じですが、「ここが来そうだ」とヤマを張る、あるいはヤマを掛ける投資だとも言うことができるでしょう。実際、ヤマが当たれば大きなリターンを得られます。17年1~4月の追加型投信の高パフォーマンス・ランキングを見てみましょう。

●2017年1~4月の高パフォーマンス・ランキング

 
高いパフォーマンスを上げているのは、ほとんどがテーマ型投信です。上位を占めているのは「地域物」で、そのほとんどが3月の選挙結果などを受けて、資金が集まり非常に好調なインド株式に投資する投信です。一方、「産業物」では、IT・テクノロジー関連、あるいはバイオヘルスの株式に投資する投信が複数入っています。

 これを見て、「テーマ型はやはりリターンが大きい」ということで「インドの投信を買おう」「ITをテーマにした投信を買おう」と思われる方も多いでしょう。しかし、テーマ型というのは予想して当てなければいけないのが難しいところです。学生時代の試験勉強を思い出していただきたいのですが、試験範囲のヤマを張って勝負した結果、外れてしまい悲惨な目に遭ったという経験をお持ちの人もいるのではないでしょうか? テーマ型投信への投資も、ヤマが外れてしまう可能性があるのです。

■テーマ型への投資が難しい3つの理由とは?

 テーマ型投資では、なぜヤマが外れてしまう…つまり予想が当たらないことがよく起こるのでしょうか。次の3点が挙げられると考えます。

●テーマ型への投資が難しい理由

  まず1つ目は、「テーマ自体の問題」です。成長すると思った産業が成長しなかったとか、当初は想定されていなかったリスクが出てきたとか、描いたとおりのシナリオにならないというケースがよくあります。

 足元では、米国のインフラ投資ファンドがわかりやすいかもしれません。トランプ大統領になったら米国のインフラ投資が増えるという思惑がそもそもあったけれど、実際に予算を検討する段階になったら期待していたほどインフラ投資は増えない、最悪は頓挫する可能性もある…となると、テーマ自体に問題があったということになります。

 2つ目は「投資期間の問題」です。投資家が考えている投資期間と、実際にパフォーマンスが付いてくる期間にギャップがある場合、たいていは後ずれしてくるので、投資家が我慢できずに売ってしまうということがあります。たとえば、薬剤の開発などでは実際に収益化するのは5年後、10年後あるいはそれ以上というケースが多くあります。また、車の自動運転なども実用化までにはまだまだ長い時間がかかるでしょう。

 本当にいいテーマだからじっくり投資しようと考えても、ファンダメンタルズが付いてきてパフォーマンスを上げるまでの期間が想定してた投資期間と大きく違えば、利益を上げるのは難しくなってしまいます。

 最後に3つ目の問題は、「投資タイミング」です。結局、これがいちばん大きい問題なのかもしれません。注目されるテーマが出てきてから投信が設定されるので、どんなに早くてもテーマの初動から1~2カ月のタイムラグが発生します。どこか一社が設定してから他社が追随する場合には、もっと遅くなります。また、投信が設定されて実際に投資家が購入するのは、さらに遅いタイミングになってしまいます。

 先ほど例に挙げた米国のインフラ投資では、トランプ大統領が就任したときから関連銘柄は大きく上がりましたが、インフラ投資がテーマの投信は年明けに設定…ということになると、すでにある程度期待は織り込まれている状態で、さらなる上振れがないと思ったほどのパフォーマンスにはならないかもしれません。

 もう1つ、投資タイミングで言えば、マーケット全体で見ればヘッジファンドやアクティブマネジャーなどは投信が設定されるよりずっと早いタイミングで投資を行なっています。そのため、ヘッジファンドなどより遅いタイミングで設定されたテーマ型投信に、個人投資家が最後に乗るというパターンになりがちなのです。

 こうした3つの問題があるため、テーマ型投信は難しいのです。とは言え、テーマ型への投資がまったくダメというわけではもちろんありません。思惑どおりに業績拡大や経済成長の波に乗り、一大テーマになったときには、しっかりパフォーマンスが取れるのもまた事実です。では、どうすればよいのでしょうか?

 予想が当たるか外れるかは、事前にはわかりません。政治や経済で予測しなかったことも起こり得るでしょう。であれば、仮に盛り上がると思ったテーマであっても、最初は少額から投資するというのが鉄則だと私は考えます。テーマ型投資に限らず投資全般の基本原則とも言えますが、少額から分散して買っていくことです。また、本当によいテーマだと思えば、短期的な上昇で利食いが出て下がったところで落ち着いてエントリーして、じっくり長期投資をしていくというのも重要ではないかと考えます。

■「地域物」のテーマ型投信は年ごとの好不調の差が激しい

 前述のとおり、今年1~4月はインド株に投資する投信が圧倒的に高いパフォーマンスを上げていました。足元を見る限りは絶好調ですが、では昨年以前はどうだったのでしょうか? 「地域物」のテーマ型投信の中でも、人気が高いBRICs4カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国)の株式ファンドについて、リーマン・ショックの影響が軽微になった10年以降の年ごとのパフォーマンスを振り返ってみました。

●BRICs 4カ国の株式ファンドのパフォーマンス

  今年1~4月まででは+21%と好調のインドですが、15年、16年はけっこう低迷していたことがわかります。さらに遡ると12~14年はプラスで推移していますが、11年は▲41%と大きく落ち込んでいます。日経平均もマイナスですが下げ幅はインドのほうが倍以上とはるかに大きく、やはりハイリスクであることがわかります。

 また、他の3カ国――ブラジル、ロシア、中国を見ても、インドと同様に年ごとの上昇と下落の波が激しくなっています。たとえばブラジルは、オリンピックがあった16年は+44%と大幅に上昇していますが、その勢いは残念ながら今年まで続いてはいません。また、前年の15年には▲41%と大きく下落しているため、15年、16年の2年間で見ると±ゼロになってしまいます。

 いずれにしろ、過去7年の間、円建てで右肩上がりに上昇した国はありませんでした。もちろん、ある年に上がる国を正しく当てられれば大きく儲けることは可能です。しかし、ピンポイントで「16年はロシア株が上がる」と予想するのは難しいでしょう。そうであれば、地域一極集中ではなく、BRICs全体、新興国全体を買うという。そうなると「テーマ型」ではなくなりますが、全体的に持って予想をしないというのは1つの考えるべき方法ではないでしょうか。

■ヘルスケア系投信で大きく儲けているのは長期スパンの保有者のみ?

 続いて、「産業物」のテーマ型投信のパフォーマンスも検証してみたいと思います。本当は、最初に触れたロボ・AI系を取り上げたいところですが、テーマが盛り上がってからの期間がまだ短いので、ここでは長期的に人気があるテーマのヘルスケア・バイオ系の投信で見ていきましょう。

●ヘルスケア・バイオ系ファンドの年次パフォーマンス

   グラフは、第1次ブーム(00~04年頃)、第2次ブーム(09~11年頃)、それ以降(13年~)に設定されたヘルスケア・バイオ系投信で、為替ヘッジなし、グローバルに投資する12本のパフォーマンスを年ごとに集計したものです。緑がバヘルスケア・バイオ系ファンドで、参考指標として黄色のMSCIワールドを並べています。

 見ていただくとわかるとおり、テーマ型と言ってもヘルスケア・バイオ系ファンドが大きく上昇して、MSCIワールドにも勝っているのは、実は13年と14年の2年間しかありません。下落した08年に付いては「負けが小さい」という状況ではありますが、翌09年の反発時にヘルスケア・バイオ系は取れていないので、08、09年で±ゼロになってしまっています。

 また、16年はトランプ相場でマーケット全体はプラスでしたが、ヘルスケア・バイオ系ファンドはその上昇には付いていけていません。17年1~4月に関してはマーケット全体より若干パフォーマンスがよくなっていますが、16年に出遅れた分を取り戻しているだけという見方もできるため、本格的な復調かどうかは判断が難しいところだと考えています。

 一方、12本のファンドの資金流出入については、14~15年に大きく伸びていて、13~14年の好調を見て購入した人が多いのではないかと推測されます。しかし、続く15年以降のパフォーマンスはあまりよいとは言えず、14~15年に買った人は上昇局面を享受できていないのではないかと思います。13~14年の高いパフォーマンスを享受できたのは、主に第1次、2次のブームで購入した比較的長期のスパンで持っている投資家ではないでしょうか。

 繰り返しになりますが、ヘルスケア・バイオ系のような人気テーマであっても、常にマーケットに勝てているわけではありません。また、09年や16年のパフォーマンスからわかるように、上げ相場に弱い面もあります。ヘルスケア・バイオ系ファンドは、今後もまたブーム化したり業績拡大で株価が上昇する可能性は大いにありますが、テーマだというだけで飛びつくのはリスクが高いと言えるでしょう。

■テーマ型投信はメインではなくプラスαで買っていくのがオススメ

 地域や産業を絞り込んだテーマ型への投資は、読みが当たると大きな利益が得られて楽しいものです。しかし、ここまで見てきたように、テーマ型投信のパフォーマンスには波があります。集中して投資して、その結果、テーマの読み間違いや投資期間の問題などから当たらなければ大変です。年金基金などプロの運用ではテーマ型を扱わないことからも、やはりテーマ型を当て続けるのは難しいことがわかるのではないでしょうか。

 よほどテーマに確信が持てるのでなければ、私は地域や産業が分散されたファンドを買うことを推奨したいと思います。先ほどの試験勉強の話で言うと、ヤマを掛けるのではなく平均点を狙うわけです。ただ、積極的にテーマを狙わなくても、たとえば米国の時価総額上位を買っていけば、アップル、アルファベット(グーグルを傘下に収める企業)、マイクロソフト…と結局ある程度はAI投資になり、旬のテーマを多少は取り入れることになります。

 ベースは平均点狙いのインデックスファンドで、そしてプラスαで興味があって「これは行けそうだ」というテーマ型投信を買ってみるというのがオススメです。そうすれば、当たったときには楽しい成功体験になりますし、たとえ読みが外れても大きな損失は被らないからです。無理をせずにテーマ型投信と楽しく付き合っていって欲しいと考えます。

(取材・文/肥後紀子、撮影/柴田潔)


 前山 裕亮
ニッセイ基礎研究所、研究員。

大和総研、大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)、イボットソン・アソシエイツ・ジャパンを経て現職。現職では株式市場や投資信託といった資産運用について調査、分析に従事。