「AR国内バリュー株式ファンド(サムライバリュー)」 市場変動リスクを低減しつつ、有望な中小型株への投資で利益を得る「絶対収益」型のファンド

~運用開始から丸8年を迎える「資産倍増プロジェクト」発ファンドの最新状況【3】~

「資産倍増プロジェクト」の専用ファンドとして、2011年11月に設定されたアセットマネジメントOneの「AR国内バリュー株式ファンド(愛称:サムライバリュー)」。有望な中小型株の「買い」と指数先物取引の「売り」を組み合わせることで株式市場の価格変動リスクの低減を図り、相場環境に左右されない「絶対収益」の獲得を目指す。

このファンドの過去13カ月間の運用状況をはじめ、先物取引を活用した運用の特徴と仕組み、また今後の株式市場と中小型株の見通しなどについて、安西慎吾・アセットマネジメントOne運用本部株式運用グループ国内株式担当ファンドマネジャーに聞いた。

■中小型バリュー株には厳しい環境が続き、ファンドは13カ月間で14%の下落に

「サムライバリュー」は、中小型バリュー株の「買い」と指数先物取引の「売り」を組み合わせて運用するため、市場全体及び中小型株市場の値動きを見ておく必要がある。そこで、前回の取材後の2018年9月~2019年9月末までの13カ月間について、中小型株を含む株式市場全体の値動きを見た上で、ファンド自体の運用状況を振り返ってもらった。

「市場環境を一言で言うと、全体に下落した13カ月間でした。TOPIX(配当込み)の値では5.4%の下落、また『サムライバリュー』が主な投資対象としている中小型バリュー株の指標であるラッセル野村ミッド・スモール・バリュー・インデックス(配当込み)についても10.5%の下落となりました。どちらも下落ですが、TOPIXに対して中小型バリュー株がアンダーパフォームするという結果になりました」(安西ファンドマネジャー、以下カギカッコ同)

アセットマネジメントOne運用本部株式運用グループ国内株式担当ファンドマネジャー 安西 慎吾氏

安西ファンドマネジャーによると、この13カ月間は2018年9月~12月末までと2019年1月~9月末までの2つの局面に分けられるという。「前半は、世界的な景気減速懸念を背景に急調整しました。9月だけは、米国の景気指標の底堅さや、米中の関税発動が予想より柔軟化しそうだということから上昇したものの、その後は下落に転じ、特に10月、12月はそれぞれ10%ほどの大きな下落となりました。理由は米中の貿易摩擦懸念、中国をはじめとする世界景気の悪化懸念などです。ただし、いちばん大きな原因と言えるのは、米国がこの時点ではまだ金融引き締めの政策を取っていたことだと考えます」。

一方、2つめの局面である2019年1月以降に関しては、「過度な悲観が後退した後、ボックス圏で推移した」とまとめる。「1月以降、米国の金融政策が柔軟化するという期待が高まり、相場は徐々に落ち着きを取り戻しました。ただ、1~3月までかなり戻した後はボックス圏の展開となっています」。米中の貿易協議がプラスにもマイナスにも働いたためで、双方の強硬姿勢が一旦柔軟化すれば上がるし、逆にトランプ政権が再び強硬姿勢となれば株価にはマイナスの影響を与えた。「また、欧州や中国の景気鈍化懸念もあり、さらには米国の長短金利差が逆転したことで、景気の先行き不透明感も強まりました」。ただし、欧州の景気鈍化懸念に対しては、9月にECB(欧州中央銀行)が金融緩和による対策を打ち出している。

こうした市場環境の中で中小型バリュー株の状況はどうだったのか、もう少し詳しく解説してもらった。「冒頭では中小型バリュー株は10.5%との下落とお話しましたが、これを『規模』と『スタイル』に分けて説明しましょう。『規模』の面では、この期間の大型株(TOPIX100)の値動きは▲3.4%でしたが、小型株(ラッセル野村スモールインデックス)は▲11.2%。小型株にとってより厳しい環境だったと言えます」。その理由としては、世界的なリスクオフの流れで、流動性リスクが意識されるような資産は特に売られて下落したということが挙げられるでしょう」。

また「スタイル面」では、グロース(ラッセル野村トータル・グロース・インデックス)のこの期間の値動きは▲3.4%で、バリュー(同バリュー・インデックス)が▲6.9%。どちらも下落しているが、「バリューの劣位が非常に顕著となりました。すでにお話したとおり、この期間の期初は米国の金利が上昇していましたが、その後は下落となり、日米欧共に金利が低下する中、バリュー株で大きな割合を占める金融株のパフォーマンスがよくなかったことがマイナスに働きました」。


中小型株が上がらず、バリュー効果も効きづらい。「規模」で見ても「スタイル」で見ても厳しい外部環境のもと、銘柄選択の効果を発揮しづらい13カ月間だったと安西ファンドマネジャーは語る。「この結果、13カ月間のサムライバリューの基準価額は▲14.4%となりました。これは、設定来で振り返っても非常に苦戦したと言えるでしょう」。なお、2019年9月末時点の基準価額は1万3216円、純資産総額は63億7000万円となっている。

■中小型株の「情報の非対称性」に着目し、有望な銘柄を絞り込む

さて、サムライバリューは中小型バリュー株への投資と指数先物取引を組み合わせるのが運用の大きな特徴だが、運用プロセスの第一段階として、どのような視点で中小型バリュー株を選別するのかという現物投資の部分をまずは見ていこう。

「投資対象はTOPIX100の構成銘柄を除く国内株式ですが、財務基盤の脆弱な銘柄はあらかじめ排除します。その後、アナリストが実際に企業を訪問して、業務動向や事業内容に関する調査を行なうというボトムアップアプローチを経て、将来的に割安な状態が解消されると見込まれる有望な銘柄に選別投資していきます。銘柄を選別する際には、割安かつ業績改善を前提として、株価上昇やバリュエーション訂正につながるカタリスト――言い換えるなら『きっかけ』の存在を重要視しています」

そもそも中小型株は、大型株に比べて証券アナリストのカバレッジが少なく、情報の非対称性からファンダメンタルズの情報が株価に十分に織り込まれていない可能性が高いという。そのため、カタリストが具現化したときには株価上昇が相対的に大きいことが期待できる。「カタリストにはマクロとミクロがあり、前者は成長戦略や規制緩和といった政策の変化、技術革新や社会構造の変化によって恩恵が受けられるもの、また後者は資本効率の向上や収益の拡大、採算の改善などが挙げられます」。

実際に、「サムライバリュー」に組み入れている銘柄とカタリストの例を挙げてもらった。「店頭ディスプレイやオフィスビルの内装などを手がける丹青社は、都市再開発の活発化で恩恵を受けると見ています。都市の再開発というカタリストに加えて、ビルの容積率緩和といった政策の後押しもあります。また、電設資材の卸売でトップシェアを持つ因幡電機産業は、卸売に比べて利益率の高い自社製品が最近伸びている点に注目しています。具体的な製品はエアコンの配管化粧カバーで、オフィスの建替に伴う需要増や小中学校の教室へのエアコン導入、さらには災害時の避難先になる学校の体育館へのエアコン導入などで、ここ1~2年は空調関連の事業がこの会社の成長をけん引するのではないかと見ています」。

●株式組入上位10銘柄と組入比率

■指数先物の「売り」で、株式の実質組入比率をコントロール

続いて、もう一つの運用のプロセスとなる、指数先物による株式の実質組入比率のコントロールを見ていこう。冒頭でも触れたように、サムライバリューでは中小型バリュー株式の現物に投資すると同時に、TOPIX先物などの株価指数の先物を売建ている。こうすることで、株式市場の価格変動の影響を低減しつつ、銘柄選択効果などによる「絶対収益」を獲得することが可能になる。

「この株式の実質組入比率は、相場環境に応じて0~20%の範囲内で機動的にコントロールしています。実質組入比率を決める要素は2つあり、1つはマクロ環境や市場環境などの投資環境分析で、2つめはTOPIXの移動平均線を利用したトレンド分析です。相場が上昇するときには組入比率を上げてパフォーマンスの向上を目指し、逆に下落基調にあるときには組入比率を下げることで市場リスクの低減を図ることが可能と考えています」

ただ、弱点もあるという。上昇あるいは下落というトレンドが出ているときは組入比率のコントロールが機能しやすいが、逆にボックス圏のところではトレンドが出ないため市場に追随するのは難しくなる。


「直近の13カ月間に関して言えば、9月の上昇トレンドには追随できました。10月は急落したため、若干組入比率の引き下げが遅れた部分もあります。一方、後半のボックス圏相場では苦戦しました。まとめると、絶対収益の獲得が難しい13カ月間となりましたが、実質組入比率のコントロールによるマイナスの影響は、最小限に食い止められたと言えるでしょう」

■今後の市場は懸念材料はあるものの、緩やかな上昇局面を予想

次に、今後の市場全体並びに中小型バリュー株の見通しについて聞いた。安西ファンドマネジャーは、米中の貿易摩擦懸念に対しては引き続き留意が必要なものの、今後は緩やかな上昇局面になっていくのではないかと語る。

「確かに米中貿易摩擦は解決していませんし、世界景気の鈍化懸念や海外の政治動向に対する不透明感、さらに今後は国内企業の業績見通しの引き下げも考えられるため注意は必要です。ただ、米国の経済指標が比較的底堅く推移していることや、日米欧共に金融政策が緩和方向に向かっているといったプラス材料が下支えになると考えます。また、国内に目を向けると、企業の株主還元の拡充――たとえば自社株買いが昨年度の倍のペースで行なわれていて、株主還元の積極化という流れは今後も続くでしょう」

また、サムライバリューの現物株の投資対象である中小型株市場についても、今後は前向きな見通しを持っているという。約1年前の前回取材時には、小型株(ラッセル野村スモール・キャップ・インデックス)の予想経常増益率は大型株(ラッセル野村ラージ・キャップ・インデックス)に比べて低く、予想PERについては大型株よりだいぶ割高だった。

「しかし、今年度については現時点では予想経常増益率は小型株が+3.1%、大型株が▲0.4%と、業績面では小型株のほうが見通しがよい状況となっています。予想PERについては小型株が14.9倍、大型株が14.1倍で、まだ若干小型株のほうが割高です。ただ、2年ほど前には最大で2.4ポイントほど小型株のほうが高かったので、過去の割高感はすでに解消されたと見ています。需給面では注意も必要ですが、結論としては中小型株の見通しは明るく、その中で引き続きカタリストを重視した銘柄選択によって、収益を獲得できるチャンスが増えていくのではないかと考えています」

2018年9月~2019年9月末までの13カ月間は、サムライバリューにとっては厳しい運用環境となったが、たとえば積立投資によって中長期で資産を形成していくには、そういうときこそが投資を始めるよい機会と言えるかもしれない。「サムライバリューは、債券やリートといった資産との相関関係が低く、株式との連動もそれほど高くありません。このファンドをご自身のポートフォリオの一部に組み入れることで、ポートフォリオ全体のリスクを低減することも期待できます。仕組みをよくご理解いただいた上で、ぜひご検討いただければうれしいですね」。

最後に、サムライバリューのコストを確認しておこう。購入手数料はノーロード(無料)で、信託報酬は1.353%(税抜1.23%)、換金時には基準価額に0.05%をかけた信託財産留保額がかかる。ファンドの詳しい情報については、こちらのページでも確認できるので、参考にしてほしい。

(取材・文/肥後紀子、撮影/柴田潔)