「新興国中小型株ファンド」 2つの運用戦略によって、新興国の高い成長をリスクを抑えつつ取り込めるファンド

~運用7年目を迎えるネット証券専用ファンドの現状をレポート【2】~]

成長期待の高い新興国の中小型株に投資し、2つの運用戦略によってリスクを抑えながら高いリターンを目指すという、アセットマネジメントOne(旧・DIAMアセットマネジメント)の「新興国中小型株ファンド」。同ファンドの直近1年の運用状況と「低リスク+高リターン」を可能にする運用の特徴、また今後の見通しについて、菊地尚文・アセットマネジメントOne 運用本部株式運用グループ外国株式担当ファンドマネジャーに聞いた。

成長期待の高い新興国の中小型株に投資し、2つの運用戦略によってリスクを抑えながら高いリターンを目指すという、アセットマネジメントOne(旧・DIAMアセットマネジメント)の「新興国中小型株ファンド」。

同ファンドの直近1年の運用状況と「低リスク+高リターン」を可能にする運用の特徴、また今後の見通しについて、菊地尚文・アセットマネジメントOne 運用本部株式運用グループ外国株式担当ファンドマネジャーに聞いた。

■新興国の景気拡大などで、この1年のパフォーマンスは+13.53%に

前回(2016年6月時点)の取材時に、今後の見通しとして「経済成長率でも企業収益でも先進国を歴然と上回っている新興国は、ここまで大きく下落した分、今後1~2年では反転の可能性が十分にある」と語っていた菊地ファンドマネジャー。その予測のとおり、16年6月~17年5月末までの1年、新興国市場は好調に推移した。

「チャイナショックや米国の利上げ懸念などにより、2015年半ばからの1年で新興国株はかなり下落していたため、割安感から買いが入ったという面もあります。また、米国をはじめ世界的に景気拡大期に入って来て株が好調だったことも要因に挙げられるでしょう」(菊地ファンドマネジャー、以下カギカッコ同)

アセットマネジメントOne 運用本部株式運用グループ外国株式担当ファンドマネジャー 菊地 尚文氏

反転の直接的なきっかけとなったのは、16年6月のブリグジット(英国のEU離脱問題)だったという。「前述のとおり、すでにかなり下げていたところにブリグジットで瞬間的に大きく下げたことで、そこからは反発という流れになりました」。さらに、11月の米国大統領選でトランプ氏が勝利。一旦はドル高になったものの、12月以降は対円だけでなく他の通貨でもドル安になっていき、それが新興国通貨の買いにもつながったと指摘する。

「また、米国の株式市場は好調ですが、すでに十分上昇しているとも言えます。そこで、新興国にも買いの手が回ってきたという状況です。実際、17年に入ってからは新興国市場への資金流入がかなり明確になってきています」

個別の新興国はどのような状況だろうか。基本的には、中国を除くアジアの国・地域は順調だと菊地ファンドマネジャー。「中でも、最も好調なのがインドです。昨年11月に、突如高額紙幣の回収を実施したため一時的に株も通貨も暴落しましたが、結局はそれがいい『調整』となって、2月の地方選挙ではモディ首相側が大勝しました。この結果に株式市場もポジティブに反応して、下落前の水準まで一気に戻ってきています」。ちなみに、高額紙幣回収の目的は不正な蓄財への対抗策で、そうしたモディ首相の姿勢は世論に評価されているとのこと。

「インドに限らず、新興国では政治動向も注視する必要があります。台湾では16年1月の首相選挙以降、構造改革が進んでいます。中国ともつかず離れず友好な関係を保っていて、景気も少しずつ上向いている状況です。韓国は大統領の交代がありましたが、政治スキャンダルには比較的慣れている国であり、『膿は出した』ということで今後への期待から株価は上昇しています」。さらに、アジア以外ではヨーロッパの景気が好調なことから、その恩恵を受けて東欧諸国市場も上昇しているという。

●運用実績の推移

インドや台湾など好調な新興国がリードした結果、2016年6月~2017年5月末までのファンドの基準価額は13.53%と2ケタの上昇を達成した。なお、5月末時点での純資産総額は13億2600万円、設定来の累計分配金(税引き前、1万口あたり)は5500円となっている。

■2つの運用戦略で、下げ相場に強く上げ相場にも付いていける!

さて、名前のとおり「新興国中小型株ファンド」は、新興国の中小型株に絞って投資するファンドだ。新興国株それも中小型というと、高い成長を見込める一方で、リスクも高い。しかしこのファンドでは、2つの運用戦略によって新興国の中小型株であっても、冒頭で述べた「リスクを抑えながら高いリターンを目指す」ことを可能にしている。

ここからは、2つの運用戦略の内容とその効果について見ていこう。まずファンドに組み入れる銘柄は、新興国23カ国の中小型株式で構成される「MSCIエマージング・マーケット・中小型株インデックス」の銘柄から選ばれる。銘柄を絞り込む際に用いられるのが、「低ボラティリティ運用戦略」と「マルチファクターモデル」だ。

●ファンドの国・地域別構成比

「低ボラティリティ運用戦略とは、ボラティリティ(変動率)が小さい銘柄でポートフォリオを組むことで、結果的にリターン、つまり投資効率を上げるという戦略です。伝統的な考え方では『リスクを取るほど、高いリターンを得られる』とされていますが、新しい考え方として近年注目されています」

低ボラティリティ運用戦略によって、新興国の中小型株式でもリスクを抑えた運用ができるという。ただし、低ボラティリティ戦略だけでは下落相場には強いものの、上昇局面では物足りない結果になることもある。「そこで、力を発揮するのがもう1つの戦略であるマルチファクターモデルです」。

マルチファクターモデルは、割安性と成長性といった企業のファンダメンタルズに着目した分析から、魅力の高い銘柄のファンドへの組み入れ比率を高めるという戦略だ。アセットマネジメントOneとみずほフィナンシャルテクノロジー社が共同開発した、独自の計量モデル分析を活用して行なわれている。

「低ボラティリティ戦略とマルチファクターモデルという2つのエンジンがあることで、下げ相場にも強く、上げ相場にもしっかり付いていけるファンドになっています」と菊地ファンドマネジャー。

実際の運用状況から、戦略の有効性を確認してみたい。下の図表は、ファンドの運用期間(2011年7月~2017年6月12日まで)を市場の上昇・下落局面に分けて、各局面でのファンドの基準価額と参考指標の「MSCIエマージング・マーケット・中小型株インデックス」のリターンを比較したものだ。

●市場局面別リターン比較(報酬引落前)

※2011年7月~2017年6月12日までを上昇・下落局面ごとに8つの期間に分け、上昇と下落をそれぞれまとめた数値となっています。
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「運用期間5.9年のうち、3.9年は上昇で2.0年は下落していますが、下落局面では参考指標が-45.33%となっているのに対して、このファンドは-37.65%。7.68%もの差が付いていて、下落局面に相対的に強いことが実証できています。また、上昇局面でも参考指標を0.34%上回っています。ボラティリティの低い銘柄で構成されていても概ね上昇相場にもしっかり付いていけていることがおわかりいただけるのではないでしょうか」

■類似ファンドに比べても、安定的に低リスク+高リターンを実現

「新興国中小型株ファンド」の「低リスク+高リターン」の運用戦略が十分に機能していることは、類似ファンドとの比較からも見えてくるという。菊地ファンドマネジャーが、投信評価会社モーニングスターのファンド評価の情報をもとに解説する。

「モーニングスターのファンド評価では、このファンドと同じ『国際株式・エマージング・複数国』のカテゴリーに属するファンドは運用年数5年なら全138本あります。その中で標準偏差を比べると、カテゴリー平均が17.27%に対して『新興国中小型株ファンド』は14.76%で、平均より基準価額のブレが小さい、つまりリスクが低いことがわかります。これは、138本中10番目に低い値です。

また、リターンは運用期間5年の138本中、上位24%に入る32位です。年率では13.94%で、こちらもカテゴリー平均の11.45%を上回っていて、リスク・リターンのいずれで見ても長期的に狙ったとおりの運用がほぼできているのではないかと思います」

ただし、直近1年で見るとリターンに関しては順位を落としている。「運用1年のファンド195本の中で、本ファンドのリターンは151位。リターンは13.53%で、カテゴリー平均の20.21%を下回っています。ただ、新興国投資がこれまで以上にリスクオンの状況にあり、市場が大きく上昇しているため、これはやむを得ないのではないかと考えています。もちろん、マルチファクターモデルを利用して、テクノロジー系やバイオ系、教育サービス関連など、低ボラティリティでも成長性の高い銘柄を組み入れることで、上昇相場に付いていくことを目指しています」。

■新興国市場の上昇は今後も継続する可能性が高い

気になるのは今後の動向だが、菊地ファンドマネジャーは新興国市場の上昇はこれからも続く可能性が高いと見ている。「グローバルで景気は拡大傾向にあり、個別の新興国についてもインドや台湾、韓国、アセアン各国、東欧などで景気の予想はさらに上方修正されるのではないかと考えられるからです」。

また、米国株に比べるとバリュエーション的にはまだまだ買える水準のため、「受け皿」としても新興国株への資金流入は続くのではないかという。

一方で、注意をしておきたい国もあるとのこと。まず中国だが「今やGDPは6%台で、その数字についても正味は5%台前半ではないかと言われています。不動産投資による一時的なバブル状態が続いていて、それに対する金融引き締めも行なわれているため、他国に比べて上昇期待は高くありません」。

また、政治的なリスクを抱える国としては、汚職問題のある南アフリカとマレーシアなどを挙げるが、マレーシアの問題はすでに峠を越えているためそれほど気にする必要はないという。「南アフリカのほうは、まだ問題解決まで時間がかかりそうで、こちらは若干マイナスの影響があるかもしれません」。

「とは言え、全体的に見ると新興国に投資するには、今は非常にいい環境だと考えます」と菊地ファンドマネジャー。「前述のとおり、今後も新興国市場は上昇する可能性が高いと予想されるためです。ただ、同時にやはり新興国投資にはリスクが内在しています。すぐに何か大きな問題が起きる危険性は低いと考えますが、備えておく必要はあります。だからこそ、新興国中小型株の上昇をしっかり取り込みつつ、何かあったときには低ボラティリティ戦略がシートベルトのような効果を発揮するこのファンドをご検討いただけたらと思っています」

なお、コストについては、購入手数料はノーロード(無手数料)で、信託報酬が年2.052%(税抜1.90%)、解約時にかかる信託財産留保額が0.3%となっている。ファンドの詳細は、こちらのページで確認できるほか、運用報告会でも運用状況を動画で解説しているので、ぜひ参照して欲しい。

(取材・文/肥後紀子、撮影/柴田潔)