AR国内バリュー株式ファンド(サムライバリュー)」中小型バリュー株への投資+指数先物の売建で、どんな相場環境でも収益の獲得を目指す

~運用6年目に突入するネット証券専用ファンドの現状と今後【3】~

中小型バリュー株式への現物投資と指数先物取引を組み合わせた運用で、相場環境に左右されない「絶対収益」を追求する、みずほ投信投資顧問の「AR国内バリュー株式ファンド(愛称:サムライバリュー)。資産倍増プロジェクト専用ファンド第2弾の1本として、2011年11月30日に設定された。
サムライバリューの直近11カ月の運用状況と、不安定な相場でもプラスのパフォーマンスを目指せるという運用の仕組み、また今後の株式市場の見通しについて、安西慎吾・みずほ投信投資顧問株式運用部シニアファンドマネジャーに聞いた。

 中小型バリュー株式への現物投資と指数先物取引を組み合わせた運用で、相場環境に左右されない「絶対収益」を追求する、みずほ投信投資顧問の「AR国内バリュー株式ファンド(愛称:サムライバリュー)」。資産倍増プロジェクト専用ファンド第2弾の1本として、2011年11月30日に設定された。

 サムライバリューの直近11カ月の運用状況と、不安定な相場でもプラスのパフォーマンスを目指すという運用の仕組み、また今後の株式市場の見通しについて、安西慎吾・みずほ投信投資顧問株式運用部シニアファンドマネジャーに聞いた。

■相場全体が約12%下落する中で、+8.62%のリターンを実現

 まずは、前回取材した2015年9月以降、今年の7月末までの11カ月間の日本株市場の値動きを、3つの局面に分けて説明してもらった。この期間のTOPIXは12.1%の下落、またサムライバリューが主要な投資対象とする中小型バリュー株の指標である、ラッセル野村ミッド・スモール・バリュー・インデックス(配当込み)も15.2%の下落となっている。

 「9月から11月下旬までは、8月からの調整が続く形で始まりましたが、その後は米国の経済指標の改善や円安の進行、中間期の企業決算が堅調だったことなどを背景に、上昇する展開になりました。

 続く12月~2月中旬は、世界的にリスク回避姿勢が強まり、株価は大幅に調整しました。中国人民元をはじめとした新興国通貨の下落、原油価格の下落、さらに円高が進行したこともマイナスに働きました。ご存じの通り、1月末には日銀のマイナス金利導入を受けて上昇する局面もありましたが、ごく短期的な上昇で終わりました。

 その後7月末まではプラス要因とマイナス要因の双方があり、ボックス圏での値動きとなりました。プラス要因としては、2月下旬以降の原油価格の反発や、7月の参院選での与党勝利による経済政策への期待、米国の経済指標が堅調に推移したことなど。株価を押し下げるマイナス要因になったのは、円高の進行による国内企業業績への懸念や6月の英国国民投票でEU離脱派が勝利したことなどでした」(安西シニアファンドマネジャー、以下カギカッコ内同)

みずほ投信投資顧問
株式運用部 シニアファンドマネジャー
安西 慎吾氏

 冒頭で述べた通り、この11カ月間ではTOPIXも中小型バリュー株も10%を超える下落となり、外部環境は悪かったと言ってよいだろう。しかし、日本株を「規模」と「スタイル」に分けて考えると、サムライバリューの成績に影響を及ぼす、それぞれの特徴がもっと見えてくると安西シニアファンドマネジャーは語る。

 「『規模』で見た場合、大型株(TOPIX100構成銘柄)が-15.9%だった一方、小型株が中心のTOPIXスモールは-8.8%でした。また、グロースとバリューに分けて『スタイル』で見たときには、グロース(ラッセル野村トータル・グロース・インデックス)が-7%であるのに対して、バリュー(同バリュー・インデックス)は-17.1%と大きく劣後しました。

 中小型バリュー株式に投資する当ファンドにとっては、規模面で見るとフォロー、スタイル面ではアゲインストだったと言えます。ただ、バリュー株の中でも業種トレンドは二極化が鮮明で、比較的企業リサーチの効果が発揮しやすい環境だったのではないかと考えています」

 ●基準価額と純資産総額の推移

 相対的に中小型株が優位だったことと、企業リサーチの効果を発揮できたことに加えて、後述するように株式実質組入比率のコントロールが効いたことで、厳しい相場環境の中、直近11カ月間のサムライバリューの基準価額は8.62%の上昇となった。7月29日時点の基準価額は1万3427円、純資産総額は16億5600万円。

 2015年12月以降、サムライバリューは純資産総額の伸びが続いている。これについては、「市場全体に先行き不透明感がある中、絶対収益追求型である当ファンドに注目が集まったのではないでしょうか」。

■現物株投資では、「カタリスト」のある中小型バリュー株に注目

 続いて、サムライバリューの運用の流れを見ていきたい。現物株での投資対象は、国内の中小型バリュー株となる。

 「選定のプロセスとしては、中小型株のうち財務基盤が脆弱な銘柄を排除した上で、アナリストが実際に企業を訪問。調査・分析の結果、今後割安な状態が解消されると見込んだ銘柄を選定していきます。選定にあたっては、割安で業績改善が期待できることはもちろん、『カタリスト』の存在を特に重視しています」

 「カタリスト」とは、バリュエーションの訂正や株価上昇につながる何らかの「きっかけ」を指す。「一般論として、中小型株は大型株に比べて証券アナリストのカバレッジが少なく、情報の非対称性が存在します。そのため、業績改善などの情報が株価に十分に織り込まれていない可能性が高く、カタリストが具現化した場合の株価上昇も、大型株に比較して大きくなると考えています」

 重視しているカタリストには、マクロ的なものとミクロ的なものがあり、前者には政策の変化や技術革新、社会構造の変化などが、また後者では資本効率の向上や収益拡大、採算性の改善が挙げられるという。

    ●株式組入上位10銘柄と組入比率

(2016年7月29日現在)

 「たとえば、女性の社会進出や単身世帯の増加に伴って成長が期待される中食マーケットにおいて、競争力のある商品やサービスを供給できるような企業が挙げられます。これに当てはまるのが組入比率で2位の東プレで、大手コンビニ向けの定温物流トラックで高いシェアがあり、店舗数の増加や惣菜需要の高まりを背景に今後も成長を期待しています。また同社は、自動車のプレス部品も手掛けていて、こちらの事業も堅調です」

 なお、中小型株の現物投資部分のパフォーマンス(サムライバリューのマザーファンド「MHAM国内中小型バリュー株式マザーファンド」の数値)は、直近11カ月では+1.61%。同期間のTOPIXあるいは中小型株全体と比べて10%以上の超過収益を獲得していて、数値からも企業リサーチの効果がしっかり出ていることがわかる。

■組入比率のコントロールで、どんな相場でも収益の確保を目指す

 さて、サムライバリューでは有望な中小型株に投資すると同時に、TOPIX先物などの指数先物を売り建てていて、これが運用の大きな特徴となっている。現物株の買い+指数先物の売建による実質株式組入比率は、相場環境に応じて0~20%の範囲内で機動的にコントロールする。

 「ここ4~5年を振り返ると、安倍政権の誕生から昨年7月くらいまで相場は上昇が続いていました。当ファンドは実質株式組入比率20%が限度となるため、上昇局面では現物株だけに投資した場合に比べると収益の獲得は限定的です。しかし、相場が不安定になった昨年8月以降は、この組入比率のコントロールが安定的な収益獲得に大きく寄与しました」

  ●実質株式組入比率の推移

 グラフの2015年8月以降の部分を見ると、相場が大きく下落した8~9月、11~2016年2月、5月の各局面では実質組入比率がかなり低位になっていることがわかる。「この組入比率のコントロールによって、10%を超えた市場全体の下落の影響は限定的となり、中小型バリュー株が市場全体を上回った部分の収益を確保することができました」

 現物株にのみ投資するファンドは、株価の上昇局面ではその恩恵を100%受けられる一方で、下落局面では基準価額が大きく下落するリスクを避けられない。株価指数先物の売建を組み合わせることで、サムライバリューは相場環境に左右されない「絶対収益」の確保を目指すことが可能となっている。

■短期的にはボックス相場を、中長期的には堅調な展開を想定する

 相場環境に関わらず収益の獲得を目指すサムライバリューだが、相場全体の流れはやはり気になるところだ。今後の株式市場については、どのように見ているだろうか。

 「短期的には、ボックス圏での推移を想定しています」と安西シニアファンドマネジャー。国内の金融政策や財政政策に対する期待感、米国経済の底堅いトレンドといったプラス材料と、米国の利上げペースへの警戒感、円高進行による企業業績の悪化懸念などのマイナス材料が綱引きするイメージではないかと話す。

 「当ファンドの主要な投資対象である中小型株に関しては、現状では大型株に比べて底堅い展開になると考えています。理由は、中小型株は相対的に内需関連の比率が高く、業績改善の度合いが大型株より大きいと考えられるからです。また、大型株に比較してバリュエーション面で割高感がなく、こういった点が下支え要因になるのではないでしょうか」

 ただし、7月下旬の日銀金融政策決定会合でETFの買い入れ増額が決まったことなどから、足元では需給的に株価指数の構成比が高い超大型株が物色される流れがあり、これに関しては中小型株市場にとってネガティブな動きだという。

 「中長期的には、財政出動など政府の政策への期待と、円高による短期的な企業業績悪化に一巡感が出て、株式市場は徐々に落ち着きを取り戻していくと想定しています」

 とは言え、今後は2012年年末くらいから始まったアベノミクス相場のように一本調子で上がり続けることは考えにくい。安西シニアファンドマネジャーは、上げ下げを繰り返すような不安定な相場でこそサムライバリューの真価が発揮されると語る。

 「これまで述べてきたように、サムライバリューは上昇局面で着実に収益を狙えるだけでなく、相場の調整局面でも収益の獲得が期待できるファンドだからです。資産の一部に組み入れていただくことで、ポートフォリオ全体の収益改善につながるのではないでしょうか。選択肢のひとつとしてご検討いただけたらうれしいですね」

 最後に、コスト面を確認しておこう。サムライバリューの購入時手数料はノーロード(無料)で、信託報酬は1.3284%(税抜1.23%)。換金時には0.05%の信託財産留保額が必要になる。ファンドの詳細は、こちらのページでも確認可能だ。


みずほ投信投資顧問株式会社は、2016年10月1日に新光投信株式会社、DIAMアセットマネジメント株式会社、みずほ信託銀行株式会社(資産運用部門)と統合し、商号をアセットマネジメントOne株式会社(金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第324号、加入協会(一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会))に変更する予定です(関係当局の認可等を前提とします)。


(取材・文/肥後紀子、撮影/柴田潔)